惹き付け型のアプローチ:インバウンドマーケティングって何?

「メディア化」支援アドバイザー トミタプロデュース 富田剛史です。

当『メディア化研究所』では、何度も「押し付け型から惹き付け型へ」と話していますが、専門的にはインバウンドマーケティングなどと言われるこの考え方、どういうことかを分かりやすい例で考えてみます。

 

天才トムがペンキ塗りの仕事に付加したのは?

わたしが昔から好きでよくセミナーなどでお話しする例に、「トムソーヤのペンキ塗り」の話しがあります。ご存知でしょうか?

ある夏の日に、いたずらの罰かなにかでトムは塀のペンキ塗りを命じられます。もちろんこの暑いのにそんなことしたくない…。そこでトムは一計を案じます。すごく楽しそうにペンキを塗りはじめたのです。

そのうちに親友のハックが通りがかって「なんでこの暑いのにペンキ塗りしてるんだ」なんて聴くのですが、トムはいたずらの罰だなんてひと言も言わずに「なぜって、楽しいからに決まってるだろ!こんな奥が深い遊びはない、やればやるほど面白さにハマる…」みたいなことを言うわけです。(僕のイメージで勝手にセリフを作っていますので、だいたいそういう話しだったと思いますが違ってたらゴメンなさい)

ハックはだんだん羨ましくなって「俺にもやらせてくれ」と頼むけどトムは簡単にOKしません。結局ハックの宝物をひとつ貢がせることでこの「楽しい遊び」を少しやらせてあげます。そして次々に友人たちが通りがかって、トムはみんなの宝物を手に入れながら自分ではほとんど塗らずに壁のペンキ塗りを完成させる・・・そんな話しだったと思います。

 

この話しを聞いて「トムはずるい! 悪い子だ!!」と思ったあなたは、至極まともな感覚をお持ちです。確かにずるい。笑

ただ、この話しの大事なポイントは、友達はみんな自発的にペンキ塗りを楽しんだことで、遊びの天才トムソーヤは「ペンキ塗り」という嫌な仕事に「楽しさ」という新たな付加価値を強烈に載せたということですね。これは「惹き付け型」の典型例と言えるでしょう。

 

好きな人の気持ちを惹き付けるには?

他の例も考えてみましょう。
例えば恋愛は、基本的に惹き付け型ですよね。

しつこい押し付け型のアプローチはストーカーです。

いくら「人は何度も接している情報に親近感を抱く」と言っても、相手の気持ちを考えずに毎日メールが来たり電話が来ても、やめてくれって思うだけですよね。笑

でもそれに近いアプローチをこれまでの広告ではしてきました。特にインターネット広告などは、「確かにその商品一度買ったけど、今はいらない…」という情報をどんどん出してきます。それでもたまにクリックするときもあるけど。笑

 

惹き付け型の場合は、好きになった相手が好きそうな魅力を磨いて、相手から声をかけてくれるように仕掛けます。好きな髪型やメイク、ファッションをチェックするのは基本。その上で相手が気になりそうなことをするわけです。

例えばペット好きで犬に詳しいと分かっているなら、相手が行きそうな店に先回りして犬の雑誌をめくってみたり、その店の人と犬の話しをしていたりすると、相手から声をかけてもらえる可能性は高まるでしょう。自分が飼っているならベストですし、飼っていなくてもいますごく興味があるのでいろいろ知りたい…ということでも、相手は喜んで教えてくれるかもしれません。

ただ、いくら相手が好きそうなことでも、自分の中にまったく無いもの・無理があることなどをやってもダメですね。そんなことは続かない。

 

地方都市のまちづくりの企画などで、よくある「やってはイケナイ」パターンなのは、この<無いものを中心に位置づける>というやり方です。

例えば、過疎で苦しむ自治体が、若者が好きそうだからと「都会のDJ呼んでヒップホップダンスでまちおこし!」とか「超人気アイドルグループの何とかがやってくる!」みたいなことをしても、イベントのその瞬間は多くの若者が来るかもしれませんが、その後はよりさびしい想いをするだけですね。続くはずないんですから。

まちでも企業やお店でも、個人事業の発信でも、相手を惹き付ける企画の「魅力の中心」には、自分たちの中にあるものを位置づける必要があります。たとえ今は「そんなものが魅力と思ってもらえないだろう」と思うものでも、見方を変え、切り口を変えれば魅力的に見えてくるということはいくらでもあります。ここをトムソーヤに学ぶべきなのです。

 

また、もうひとつのよくある「やってはイケナイ」パターンは、成功事例のコピーです。もちろん成功事例には学ぶべきポイントがたくさんありますが、日本中が同じようになったらツマラナイと思いませんか?

惹き付け型の企画は、オリジナリティが勝負です。よくあるおしゃれさ、よくある便利さ・・・では人の心は動きません

 

地方創生プロジェクトの多くが勘違いしていること

首都圏から若者を地方に移住させたい。
少子化を脱するため若年層に結婚〜出産を促したい。

ということで、政府や地方自治体もいろいろ対策をしています。税金優遇や家賃補助、就業サポート、その他諸々優遇・・・。

しかし、どれだけ好条件を満載にしても、それで若者の移住が促進されると思いますか? 早く結婚してバンバン子ども作ろう!と考えると思いますか?

 

「俺と結婚したら、年収いくらの仕事がある、家もある、・・・・もある」なんていう諸条件は確かに大事ですが、その前に根本的な魅力で相手を惹き付けることが最も重要です「好き」という気持ちです。そうでないと、例え相手が条件に押されてYesと言ったとしても将来きっと残念な日々が訪れることでしょう。

まずは、自分(自社、わが街)にしかない魅力の小さな種に気づき、それをオリジナルな方法で魅力を引き立たせて発信し、そこを「好き」になってもらうこと。

多くの場合、そこが欠けています。
みんなが気づかない、でも確かに元からある、「魅力のかけら」を発見して磨き上げるプロデューサーが必要です。

人の気持ちを動かす初動ができなければ、大盛りの「条件」は意味を成しません。逆に言えば、最初の「好き」の気持ちをゲットできれば「条件」はもちろんたいへん役に立ちます。

まちづくりだけでなく、B to Bの事業でもお店の商売でもまったく同じことですね。

惹き付け型企画を考えようと思っているのに、ついつい条件山盛りのアウトバウンド型にハマらないように、この発想の違い、アプローチの違い、大事にするポイントの違いをはっきりと理解して意識することが大事なのです。