テレビ黎明期の名企画に学ぶメディア化戦略① ヤマハのコッキーポップ
「メディア化」支援アドバイザー トミタプロデュース 富田剛史です。
テレビはいつの時からか高額すぎるメディアになりました。全国ネットは大企業しか使えない値段なので、ますます大企業が太る構造。中小企業、ましてや個店がテレビで冠番組(自社名が冠された番組)を持つなど夢のまた夢です。
しかし、テレビも昔はもっと大胆で自由な企画が成り立つメディアでした。創成期ならではのエネルギーがあった昔のテレビ企画には、いま“放送型オウンドメディア”を考えていくのにヒントになることがたくさんあります。
そんな昔のテレビ名企画から、ヒントになるものをご紹介〜その意味や現代での応用編を考えていきましょう!
ヤマハの戦略的メディア「コッキーポップ」
楽器メーカーのヤマハが企画した『コッキーポップ』をご存知ですか?
放送型自社メディア戦略の好例として、富田が真っ先に挙げる例です。
大石吾朗さんの名司会のこの番組は、全国展開したヤマハポピュラーソングコンテスト、通称「ポプコン」とセットで、ラジオでは1971年〜86年、テレビでは77年から82年まで放送されました。
1960年代半頃までは、楽器は子どものためというニーズが強かったでしょう。学校の授業用の大きな需要とピアノを習わせる家向けの需要。大人が楽器を買うというのは、プロの演奏家くらいです。
60年代半ばになるとエレキブーム、グループサウンズブームが訪れますが、まだまだ一部の不良少年のブーム。それが70年に近づくと全国津々浦々で多くの若者が楽器を弾きだします。70年代のフォークブームです。
そして時代はさらに進み、シンガーソングライターという音楽を自ら生み出す若者たちが人気を集めるのです。
イベントと番組のセットで新市場成長の増加を助長
「自分もシンガーソングライターになりたい!」
その勢いを助長した名企画が「コッキーポップ」と「ポプコン」です。
中島みゆき、チャゲ&飛鳥、八神純子、世良公則&ツイスト、チェッカーズ…ここからキラ星のようなスターが続々誕生していきます。
若者たちは、放送で知ったスターに憧れ、楽器を買って練習し、バンドを組み、曲を作り、ポプコンに応募して切磋琢磨します。
その中からまた新たなスターが生まれ、新たなフォロワーを生み、楽器の需要や音楽教室の需要を支えていきます。
またヤマハは音楽出版社を持ち、版権ビジネスも広げていきます。自社の楽器を弾いて歌うスターが放送に乗れば、さらに自社ブランドの魅力アップになり、ますますビジネスが好転する…。
ビジネスモデルの回転加速のエンジンに自社完全提供の放送メディアを見事に利用した例と言えるでしょう。
逆に言えば、放送が無かったらこのビジネスサイクルはこれほど見事に回ったでしょうか?
これは、全国放送と全国イベントという大規模な試みですが、ネットを使えば自社のビジネスサイズで取り組むことも可能です。
リアルイベントと放送型オウンドメディアの連携をうまく設計すれば、適度な規模でこうしたサイクルが実現できるのが現代の面白いところではないでしょうか。