たまたまテレビの情報番組を見てたら「ローンの賢い借り方」ってテーマをやっていた。
そこに、あるお笑い芸人が出ていて、「僕らも楽屋でローンの話で持ち切りです!これはスゴイ知りたい話です〜!!」とおっしゃっていた。
気持ちは分かるけど、何やらちょっと違和感を感じてそこで消しました。
この話をすると、いろんな人にすごく怒られそうな気もしますけど・・・芸人と住宅ローンの話題で感じたことを少し書きます。
「芸人」は職業でもあるが、生き方でもあるはず
この話は前回のホセ・ムヒカ氏のことを書いた僕のブログと繋がっています。
「未来を確定しすぎるのはやめよう」ということがムヒカ氏の言いたかったことじゃないのかなっていう雑文です。多くの現代人は本来どうなるか分からない「未来」というものを確定しようとしすぎて、「現在」といういちばん大事なものを犠牲にしすぎているのではないかと。
ムヒカ氏は「人はモノを買うのにお金を使っていると思いがちだが、実はお金というよりもその人の大事な時間を費やしていることにもっと想いを寄せるべきだ」「若い人には恋をする時間が必要だ」などとラテンの国らしい少しロマンティックな言い方をしていますが、その本質は「消費欲」もさることながら「不確実さの払拭欲」の方がずっと大きいのではないかと僕は思いました。
その最たるものが「保険」と「ローン」です。
万が一のためがエスカレートしすぎているのが「保険」。
本当は不安定なままなのに、見かけの安定に自由を放り出すのが「ローン」。
お笑い芸人の楽屋で最近もちきりの話題が「どうしてオレらは銀行ローンが組めないか」「有利なローンを組むには何が必要か」だなんてまるでネタみたいな話です。
「キミらは芸人という生き方を選んだんとちゃうんか?」
「ローンで家を買うような了見で芸人が務まるのか? 一生貧乏長屋か、一発当てて豪邸か・・・そういう人生を選んだンと違うん?」
というのが僕のツッコミ。
もちろんそれにこたえてくれるはずもなく、ただ情報番組の取材VTRに芸人さん達は「うーん勉強になります〜」といった当たり障りないコメント。
でも仕方がないのです。だって、ローンのためにはクビになるわけいかないから。
ホントは違うと思っても、面白くないと思っても、雇い主や放送局やダンナの言うことには逆らうわけにはいきません。ましてや政府やお役人様ともめ事を起こすなどとんでもない・・・。
そんなことだから、テレビも舞台もどんどん面白くなくなるのです。
保険やローンよりも必要なもの
「芸人にだって普通の暮らしをする権利はある!」
「誰だって家族を路頭に迷わせたくはない…」
もちろんそうです。僕もそう思います。
なので、たまたまそこに出ていた芸人さんを責めているわけではありません。
これは個人の問題ではなく、日本全体の文化レベルの問題だと僕は思います。
「多様性」だとか「ダイバシティ」だとかいいますが、多様な生き方が社会に認められていないし、すごく狭いストライクゾーンにはまる生き方をしている人しかいなくなるとますますそうなっていくことでしょう。
「芸人という生き方」が成り立つには、それを面白がる人、好きになる人、助ける人などがいないと無理だと思うのです。芸人に限らず、あらゆる夢をもった人は同じです。
30年間確実にお金を返すことを確約させた上に万が一の時の担保もがんじがらめにとられる金融機関よりも、もっと別の期待をして応援してくれる人が身近にたくさんいて、その人たちに支えられていろんな「文化」が熟成していったのでしょう。
その意味では、「クラウドファンディング」などはとてもいい仕組みのひとつだと思いますが、もっと簡単で具体的なやり方で、自分の好きな生き方をしている人を応援することもできるはず。
浅草育ちの芸人が多いのは、あの街に売れない芸人にメシをおごってくれるひとやお店が多かったからです。
そして何より、そういう生き方のひとが好きなひとがたくさんいて、「元気?」と声をかけたり、時々舞台を観にいったり、誰か紹介したりして、昔の浅草にいれば芸人さんたちは安心してられたのでしょう。どんなすごい保険をがんじがらめにかけるよりもすごい安心感。
「芸人」だけの話ではありません。
これがあなたがいったことの具体例だと思うんだけど・・・どうかなムヒカさん?