ワタクシこと富田剛史は、2016年10月1日付けで、株式会社アヴァンティの社外取締役を拝任し、より良いメディア作りのために一緒に取り組ませていただくことになりました。ここにご報告いたします。もちろん、これまで通り他業務にも滞りなく当たっていきます。引き続きよろしくお願いいたします。
ご報告がてら、久しぶりのブログを書きます。ご笑覧ください。
創刊23年!福岡で働く女性のためのフリーマガジン「アヴァンティ」
福岡県にお住まいの方、とくに女性にはおなじみの情報誌「アヴァンティ(avanti)」は、福岡市と北九州市という福岡県の大都市を舞台に働く女性に役立つ情報誌として毎月発行されてきたフリーマガジンです。何と創刊23年!
フリーペーパーやマガジンは数々ありますが、多くはいわゆる「街ネタ」もの。飲食店や美容系サロンやエステなどの情報を満載した(言い方は悪いけど)広告のかたまりのような冊子が全国どこでもほとんどです。(それが役に立たないというわけではありません。求めている人には役立ちます)
そんな中で、アヴァンティはかなり「読み応えのあるフリーマガジン」ではないかと思います。創業社長の村山由香里さんの想いが会社全体の想いとなり、社会にメッセージを発信し続けている「メディア」と呼べるフリーマガジン。だからこそ富田も手伝いたいなと思ったのです。
雑誌・・・「好奇心」と「想像力」が刺激されるメディア
最近ではスマホメディアにすっかりやられてますが、「雑誌」は僕らの世代にとっては大事なメディアです。東京オリンピックの年に生まれた僕にとって「ポパイ」や「ブルータス」、「ぴあ」や「ロッキングオン」、「GORO」「プレイボーイ」「宝島」などの影響は計り知れません。女性なら「an an」「Hanako」「Olive」などのマガジンハウス系から数々のファッション誌、ライフスタイル誌・・・。新聞とテレビは親のメディアだけど、ラジオと雑誌は自分のメディアというイメージがありました。
それが今すっかりPCとスマホに奪われているのだろうけれど、「雑誌をめくる」というのはやはり独特な時間で、なんとも「好奇心」と「想像力」が刺激されるメディアです。
あの松岡正剛は雑誌編集について「情報をリニアに整理してノンリニアに楽しむ」みたいなことを言っていた気がするけど、カンタンに言うと、パッとめくったところをどこでも楽しめるのが雑誌の面白さということでしょう。まことに同意します。
出会い頭で心奪われるコピーや写真、読みはじめたら止まらない軽妙な文章・・・いやもちろん、WEBマガジンでもありますよ、写真や文章に魅かれることは。しかし雑誌表現の豊かさには到底かなわない。
そして、「ページをめくる」という行為。それも自分の好きな空間にいるときに雑誌をめくるのが何とも好きで、スクロールやクリックじゃダメなんだなぁ…あの時間の良さは。
1993年からの23年、「働く女性」に時代はどう変わってきたのだろう
さて、ビジネスとしてメディアを運営するのに非常に重要なのは「時代性」を捉えていること。
個人的なブログなら時代のニーズはともかく自分の想いを発信すればいいけれど、ビジネスでやるのなら多数に支持されることは必須条件。それには時代のニーズを背負っていることが必要でしょう。
アヴァンティが創刊されたころからの時代の動きを少し考えておきます。自分の備忘録として。
23年前といえば1993年、いわゆるバブル崩壊の直後。当時はその後の時代がこんなに変わるとは想いませんでしたが、その後日本経済は低成長の時期に入っていきます。
経済全体は低成長でしたが、女性の社会進出という点では大きく前進し続けた時代でもあります。男女雇用機会均等法の成立が1985年、その後バブル経済の好景気を背景に企業は女性総合職をどんどん採用していきます。高度経済成長期を支えたおじさんたちの意識はそう簡単には変わりませんから、それほど劇的に女性が社会で活躍!とはならなかったものの、やはり少しづつ時代が動いていったのは事実でしょう。いま大企業で管理職を務める女性の多くがこの均等法施行直後に入社した人たちです。
総合職と派遣社員、そして・・・
またバブル景気で大きく伸び、景気後退期にも伸び続けたのは「派遣社員」という働き方。この需要を支えたのも優秀な女性たちでした。パートタイマーともアルバイトとも、職場のハナ的なOLさんとも違う「派遣社員」は、正社員のバリキャリと双璧をなす“働く女性”の代表的な像でありました。
正社員のバリキャリ女性は、男性社員同様に「会社のために」という意識が強いのですが、派遣社員は(会社のこと真剣に考える人ももちろんいますけど)もっと「自分のために」という意識で働きます。なので、稼いだお金で自分を磨き、美しくなり、学び、美味しいものを食べ、旅をし、エンタメやスポーツを楽しむ・・・。それまでのサラリーマン像とはまったく違った発想の人たちが給与所得者の一角を占めるようになったのは、社会にとっても大きなインパクトだったと言えるでしょう。
バブル崩壊後、おじさんたちの小遣いが減り、若い男性や総合職の正社員は将来不安からバカ騒ぎできなくなった中で、派遣社員というある意味自由に「働く女性」たちはよりイキイキと、好奇心と向上心と現実的な小さな夢をひとつづつ実現する行動力で、この国の低成長期の経済を下支えしてきたのではないでしょうか。新商品やサービスの開発、店のコンセプト、街のつくり…すべてに影響が見られました。
そして時代はさらに進んでいきます。
経済の成長は依然ゆっくりした中で、ICT環境やAI、ロボット技術の発展、グローバル化などで、「派遣社員」「非正規社員」が活躍できる場がどんどん減っているのが昨今でしょう。一方で、幹部候補生の総合職ではなくても女性社員の登用はごく普通のこととして社会に根付いてきたようにも感じます。男性社員と変わらない扱いになるところまで、あと一歩とまで言わなくとも数歩のところまで来たのかもしれません。
そこで当然出てくる問題は、子どもを産み、育てるという人類的に重要な役割との折り合いの付け方です。
国もようやく対策に本腰を入れはじめました。しかしそのイメージは旧来の社会の枠組みの中で出産や子育てをしながら働けるようにするにはどうするかという発想が多くを占めているようにも感じます。
働く女性のためのフリーマガジンに求められることってなんだろう
現実には、10年後、20年後の「働く女性」は、どんな働き方をしているでしょうか。
オフィスに通う働き方、通わない働き方、
お金を得るための仕事、喜びを得るための仕事、
働く時間対価としての給与、価値を認められての報酬、
夢と現実、リスクとリターン、安定とワクワク感、起業という選択肢・・・
もちろん、女性に限ったことではありませんが、「働く」というライフスタイルを女性がはじめたのは人類史的にはごく最近のこと。出産、育児という重大な役割、専業主婦や家事手伝い、男性を支える役割としては、もちろんすべての女性が太古から働いてきたのは間違いありませんが、社会で生きる糧を得るための、仕事を通じて社会に主体的に貢献するための「働き」をこれほど一般的に女性がし始めたのはせいぜいここ数十年です。
だからこそ、どうしたらいいか、他のひとはどうしているのか、どんな問題解決の方法があって、どんな楽しいことがその先にあるのか・・・時代とともにどんどん変わるこうした情報を届け一緒に考えるメディアの役割はより重要です。特に「女性の働き方」はリアルな街との繋がりがとても大切で、アヴァンティのような「地域誌」が重要なのだろうと思います。
ということで、私もそんな大事なメディアを少しでも面白くすることに貢献できたらいいなと思っている次第です。
また、もちろん会社の収益にも貢献することが大前提です。「フリーマガジン」という形態である以上、企業や自治体などにお金をだしてもらって運営することになります。ここで僕としては久しぶりに「広告」というビジネスモデルにまた向き合うことになるのですが、これも時代とともに大きく変わってきている分野に違いありません。
ネットメディアである「avanti online」も含めて、メディアとして読者=消費者の味方であることは決して譲らぬままに、クライアントのビジネスにも役立ち、みんなに価値のあるメディアであり続けること。このバランスは針の穴を通すような仕事だとは思いますが、それこそがメディアビジネスの醍醐味であります。
今後、アヴァンティの富田としてお目にかかることもあるやもしれません。どうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。