ベネフィット…本当に提供するのは何か

メディア化を考える上で最重要なキーワードが「ベネフィット」
またまたカタカナですみません。マーケティングの用語は本当にカタカナやアルファベット略語が多くて困ります。

 

提供価値の本質を考える

ベネフィット・・・日本語で言いますと、「価値」ということですが、もっと“本質的な価値”というニュアンスです。

例を挙げましょう。

工具店にドリルが欲しいとお客さんが来ました。
言われたサイズのドリルが無い時に、「いま品切れ中です」「取り寄せますか?」というのが普通。でもお客さんが本当に欲しいのは「穴」です。しかも穴を10も20も空けるのではなく、たった2つだと言うのなら、「お客さんにはキリをおススメします」ということができます。

さらに、よく聴けばお客さんは少し大きな絵を飾るために穴をあけたいのだと分かれば、穴なしで絵を飾れる便利グッズをすすめれば、実は穴すら必要がないかもしれません。

もうひとつ。

ラジオショッピングは、テレビショッピングよりもずっと解約率が少ないと言われます。それはなぜか?

私たちのようなラジオの制作者がショッピングキャスターに要求するのは、その商品の“本質的な価値”を伝えるということです。例えば新型の炊飯器を売るのにもちろんその機能を説明するのも大事ですが、何より大事なのは「今までよりもおいしいご飯」が炊けるということを想像してもらうことなのです。

リスナーは「物」を見ていませんので、テレビのように商品の外観に違和感持つことは少なく、それを使って美味しいご飯を炊くことに意識が行きます。それが、ラジオショッピングの返品率の低さに繋がっているのだと思います。

 

ベネフィットの設定によってメディア化の戦術が変わる

あなたの会社やお店がお客様に提供している「ベネフィット“本質的な価値”」は何でしょう? その方向によって、メディア化戦術が違ってきます

「どこよりも安い」や「売れ筋商品の欠品なし」など便利さを追求する方向のベネフィットであれば、Webサイトの作り方としてはデータベース検索を充実させるのがいいでしょう。

一方、「どこよりもユニークな」とか「店主のこだわり」など想いに基づく方向のベネフィットならば、Webサイトはもちろん店舗作りから社員教育まで、放送局や雑誌社のような「メディア化」を意識すべきです。

 

例えば、ある駅前に昔から2軒の酒屋さんがあったとしましょう。時代の変化に対応せねばこの先やっていけません。

1軒はセブンイレブンになりました。提供するベネフィットは「便利さ」です。

もう1軒はローソンかファミマになることも検討しましたが、お酒にこだわりがあった店主は、これまでよりももっと希少なお酒を揃えるようになりました。提供するベネフィットは「酒という文化の楽しさ」です。

以前は2軒の酒屋で似たようなチラシを作り配っていましたが、後者の酒屋はチラシを「酒の情報紙」と位置づけを変えました。またホームページも同様にリニューアルし、店主のこだわりを発信するメールマガジンも出すようになりました。

その結果、他地域からもお客が来るようになり、またネットで他県からも注文が入り、商圏が変わっていきました。ベネフィットを捉え直し、お店、チラシ、Web、メルマガとまさにメディア化を進めることで、利用者がファンに変わり、コミュニティを作っていくという例です。

 

メディア化の前に必要なこと

「メディア化」は、経営者のメッセージがその企業の提供価値の中心にある場合により有効だと言えるでしょう。

メッセージを届けるもの・・・それこそがメディアです。

逆に言えば、メディア化戦略を進める前に、経営者のメッセージを明確にしなければ、多くの人が惹き付けられはしません。

そしてそれは、市場の好みや傾向を分析して打出すようなものではなく、経営者自身の中からにじみ出てくるものだと富田は考えます。もちろん、あまり勝手なメッセージは受入れられませんので、市場の好みや傾向の分析も大切ですが、顧客の利便性の追求の前に、まず自らのメッセージありき・・・それを多くの人に伝えていきたい想いが強い企業の方が、メディア化の時代には勝ち残って行くのではないでしょうか。