メディアプロデューサー/「メディア化」コンサルタント トミタプロデュースの富田剛史です。
今日は、新型コロナウイルスは本当に「太陽の遣い」かもしれないと思った新聞記事と、少し前にもてはやされた「ストーリーマーケティング」について考えたことをシェアします。
その地の最高の食材が地元で食べられず大都会で余剰なんて何かおかしい…
と感じた料理人が起こした行動
新聞記事でこんなことが紹介されていました。
コロナウィルスによる大都市の飲食店への影響がものすごい勢いで食材余剰を生み出したこの春、この問題にどう対処したらいいかを、ある割烹の料理人が仲間とネット会議で話した結果、余っているのは高級食材だと言うことに気がついた。
普通の米や野菜はさほどでもないが、料亭や高級レストランで出される伊勢エビやマダイ、その他高級な食材が余って値崩れを起こしている…。そこで彼ははたと、こういう高級食材は地元では消費されていないと言う単純な事実に目を向けた。これまで当たり前のように感じてきたが、その土地の本当においしいものが土地の人に食べられていないのは、考えてみればおかしなことではないか。
そこでその料理人は、地元の生産者や加工業者と協力して、地元のおいしい食材を使って加工品を作った。そしてそれを県内には原価に近い格安価格で、県外には値段を高くして販売することにしたという。その差額収益の一部は地元の学校での食育教育などにも使われるそうだ。
料理人は、今後はただ高級な食を客に提供するのではなく、それを生産した人の思いやその食材が取れる土地の素晴らしさなどを一緒に提供していくことも自分の大事な役割だと感じた…。
と言うような内容です。
太陽の光の王冠を名に持つコロナウイルスは、お日さまが遣わした使者なのかもしれない
こうした、経済だけではない価値の流通を考えなければならない…と言う気づきは、いま、食だけではなく各分野で日々多くの人が感じ、何かしら新しいアクションを起こし、そこに同じ志を持った仲間が集い、徐々に社会が変わっていこうとしています。
コロナとは太陽の周りの王冠のこと。コロナウィルスはもしかしたら、太陽が遣わした分身なのかもしれません。ものすごく大変な試練を人々に与えながらも、ある意味では人間が忘れかけた大切なことを思い出させてくれている。
亡くなった方、病気で苦しんでいる方やそのご家族、必死で戦っている医療関係者、売上が減って深刻な状況にある企業など、大変な思いをしている方がたくさんいる中(自分も含め)で、不謹慎な言い方に聴こえたら申し訳ありません。
しかし、この何十年も変わるべきで変われなかったことを一気に変えている新型コロナウイルスは、もしかしたら地球を見かねたお日さまが遣わした使者なのかもしれないとも感じます。
私だけでなく、案外多くの人が感じていることではないでしょうか。
「ストーリーマーケティング」ではなく、「メディア化」せよ
少し前に、マーケターの間で「ストーリー」と言う言葉が盛んに言われたことがありました。
「ストーリーで高く売れ」「ストーリーがないものは売れない」「ストーリーマーケティングだ」などと。
先に挙げた話も、こうしたマーケターによれば
「そうそう。やはりストーリーが大切!アフターコロナは、よりストーリーを売っていく時代になる」
みたいな解釈になるのかもしれません。
実際に高いお金を出す人からすればそうした満足の形もあるでしょうから、マーケティングの観点からはそれで合っているのかも知れませんが、私には少々違和感があります。
料理人が気がついたのは、「ストーリーとセットでなければ高いものが売れない」という話ではなく、「物と同時にストーリーを伝えなければならなかった」ということです。
もっと強く言うならば、『ストーリーは売るための手段ではなく、逆に商品やサービスはストーリーを伝えるための手段である』ということ。
話がまったく逆なのです。
そしてこうした活動の先に、たくさんの共感者が生まれたら、それが私が長年いってきた「メディア化した状態」です。
売上を上げるためではなく、想いを伝えるためにされた仕事が、本当のファンをつけていく
「メディア」とはメッセージを伝えるための容れ物のことです。
素晴らしい商品やサービスが、それを生み出す人の思いやそれが取れる土地の素晴らしさを伝えるとしたら、まさに商品やサービスが「メディア」になったと言えるでしょう。それが「メディア化」。
ストーリーマーケティングのほうは、どれだけ上手に仕組まれていようと、商品を売るためのツール。PR用の映画みたいなものです。
コロナ禍に現れてくる時代の変化の兆しを、見逃したり間違ったりしないように気をつけたいと思います。