クリエイティブ・ディレクター/メディアプロデューサー、トミタプロデュースの富田剛史です。

2024年7月19日(金)に押上近く・墨田区文花のCafeめぐるにて実施しましたイベント「真夏の夜バロック」は、おかげさまで大盛況でした。お見え頂いたお客様、まことにありがとうございました。お世話になったCafeめぐるの皆さま、運営協力スタッフ、チラシ配架にご協力くださったお店の皆さま、そして出演の各メンバー、皆さま本当にありがとうございました。

今回出演の縦笛侍・伊藤粒太さんの妻で、写真家のAtsuko Itoさんが写真に残してくれました。写真を少し紹介しつつ、この日この時の記憶を振り返れるようにプロデュース側の見方も文章にも残しておきます。

面白いスペースを、どう使うか…でイベントの骨子は決まる

古家Cafeめぐるはちょっと変わった作りで、中でも面白いのは今回の会場となった和室の居間です。

今回はこの居間をスタジオ化して、ステージを仕立てると共に海外とのリモートもつないで会場とコミュニケーションできるようにし、すみだの古民家の居間が空間も時間も越えてつながるどこでもドア的な感じを演出してみました。あの部屋の持つ不思議な魅力とバロック音楽、集まった皆さんの国際センスが相まって良い感じになったと思います。

トミタは、小さなスペースでのイベントから、街の一角をまるごと使ってお祭り空間を作る大規模なイベント、街回遊型のイベントなどいろいろやってきましたが、場の魅力を活かすこととステージをどこにするかを真っ先に考えます。それによってイベントのイメージや性質が大きく変わるからです。

ここで言う「ステージ」は物理的に舞台を作るとは限りません。要は演者が立つ位置がステージで、お客さんが居る位置からどう見えるか…ということ。
ホールやライブハウス、セミナールームなど専門のイベント会場などでは通常このように使う…と決まっていることが多く、普通はその通り使おうと考えますが、それをちょっと見直してみるだけイベントはぐっと面白い感じになるんです。

特に意外な空間でやる場合は、ステージの設定がイベントの骨子を決めると言っていいでしょう。

音楽ホールでばかり音楽イベントをしていては、




文化的分断が生まれるのではなかろうか

インストアライブや街の意外なところなど「イベント用に作られていない場所でやるイベント」には独特の面白さがあります。日常を非日常に変える面白さがプラスされて、ある意味ではホールでやるイベントよりもワクワク感が出しやすいのです。

とはいえ、何も無いところに、イベントに必要な音響・照明・映像・演出の機材を組み、配線を取り回すのはもちろん手間がかかります。ですので、それ用に作ってあるホールやスタジオ、イベントルーム、セミナールームといったところを使う人が多いのですが、その構造が文化的分断を生んでいるのではないか・・・とも僕は感じています。

何が言いたいかというと、専門の場所で開催するイベントばかりだと、音楽ホールに行く人と行かない人、ライブハウスに行く人と行かない人、美術館やギャラリーに行く人と行かない人、ビジネスセミナーに行く人と行かない人・・・などが分かれて行くということ。それでは街のワクワク感に繋がらないし、意外な面白いものや人に出会うチャンスが広がらないのでは?ということ。

もっと、普通のお店や寺や神社、街なかの広場や商店街の一角で、ちょっと覗いてみたくなる小さな文化イベントが、今日初めて触れてワクワクする人に全開放してあれば、全体として街の文化度は上がっていくものだと思います。そのような場がアチコチ合ったうえでそのジャンルの極みを体験できる立派なホールやミュージアムやコンベンションホールもあって、そっちにも毎年新たなファンが一定数増えていく…のが理想的な文化都市の重層構造ではないかと。

そして、そのためには、めぐるの居間のようなスペースが、もうちょっとだけイベントに必要な設備を意識して作ってあれば良いのになぁ~と僕はいつも思っているわけです。しかしそれには、設備だけじゃなく、場を提供する側も使う側も「こんな風なことが起きるといいな」という想像力が必要で、そのためには実際に使って、見せて、面白いと感じてもらうことが必要なのでしょう。

特に文化のジャンルで、街に企画マンが育つことの大切さ

「身近な才能」や「面白さの種」をどう組合せ面白い構成にするか
そして義理じゃなく「面白そう!」と思う人にどうリーチするか

イベントを企画すると、次の問題は「集客」です。

「集客が苦手~」という人は、はっきり言えば集客の前に「企画」ができていないことに問題があります。

まぁ、まったく企画なしでも数十名~100人程度のイベントなら、個人の人気や立場肩書きなどで、「あの人が言うなら」とお付き合いで集まることはあります。それはそれで素晴らしいと思いますが、それは両刃の剣でもあって僕はそのやり方は基本的に致しません。

知り合いでも知り合いじゃなくても、「そのイベントの魅力に集まった人」で一杯になるのが企画マンとしては重要です。

ですので、「集客」の前にまず、「面白そう!」は十分か? どんな人が面白がるのか? その人に情報が届くのにどうしたら良いのか?
これを徹底的に詰めるのがプロデューサーの役割です。

それが狙った通りにはまったときに、「企画者」も「演者」も「スタッフ」も少し育ち、その成功体験が徐々に「面白い事を生み出す人材」を作って行くのだと思います。

もちろん、「あの人が言うなら」と付き合いで何百人も千人も集められる人の人間力には感服しますし、そのためにその人は別の努力や付き合いや「貸し借り」をたくさんしているんだと思いますが、政治でも芸能・文化でもそれが「中身」よりも大事と考えるのは、少なくとも僕は好きではありません。

秋元康さんのAKBなどで分かるように、才能ある人、魅力的な表現者はどの街にも必ずいます。居ないのはそれを活かす企画マンの方で、自治体はプロデューサーやディレクターの育成をすべきだと思います。

自分ができる範囲は極めて限られますが、企画マンを育てる活動をこれからも地道にしていきたいと思います。

次回、あの場での企画は椅子を置くことを考えます

ということで、今回のイベントが、お店のスタッフにも参加した人にも、あの場を使う想像力の元になったら嬉しいなと思います。

あの会場を使って、今後も例えば上映会やちょっと面白い形のセミナー、またはリモートで「ここではないどこか」と繋いでやり取りするイベントなどいろいろ使えることを感じた人もいるでしょうから。

ただ、思った以上にお客さんが集まってかなり狭い客席スペースとなってしまいました。途中真ん中に少しブレイクタイムをとり、換気をし、腰を伸ばし、トイレや広いスペースでの休憩もしましたが、ちょっと大変でしたね。

お客様からの声も、内容は企画・構成・音楽みんな面白かったし満足したが、次回は椅子開催を~という声が異口同音に上がりました。はい、そうしましょう。

皆さま、大変お世話になりました。ありがとうございました!

関わってくださった皆さまへ心からの感謝を申し上げます。

富田剛史|とみたつよし

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です