放送の名企画に学ぶメディア化戦略③ ミユキ野球教室

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「メディア化」支援アドバイザー トミタプロデュース 富田剛史です。

テレビも昔はもっと大胆で自由な企画が成り立つメディアでした。創成期ならではのエネルギーがあった昔のテレビ企画には、いま“放送型オウンドメディア”を考えていくのにヒントになることがたくさんあります

今回もそんな昔のテレビ名企画から、ヒントになるものをご紹介〜その意味や現代での応用編を考えていきましょう

 

高級紳士服地メーカーが
子ども向け「野球教室」の番組を持つ意味

「ミユキ野球教室」は、1957年から1990年まで放送された番組。男の子がいる家では、日曜日の朝の超定番だったという家庭も多いのではないでしょうか。

番組冒頭で流れるミユキのCMの「紳士だったら知っている〜、服地はミユキと知っている〜」もとにかく頭に残ります(ちなみに作曲は山本直純さん)。

 

御幸毛織の生地は本場イギリスにも負けない品質を売りにした富裕層向け商品です。一般サラリーマンで年に一着はミユキで作るよ…なんて人はなかなかいない。

ターゲットを富裕層に向けるのであれば、テレビは効率が良いメディアではありません。大衆層にリーチするメディアだからです。しかも、主に子どもに向けられた番組だった。富田も子どものころ見ていたのでよく覚えていませんが、wikiによれば、初期は「野球評論家の中澤不二雄とゲストの野球関係者が野球の技術を講義する教養番組」だったということ。

テレビ初期のことですから、たぶん何かで盛上って提供が始まったのでしょうが、高級紳士服の服地メーカーが子どもの野球教室番組を提供し続けた、その意味は何でしょうか?

これは富田の推定ですが、おそらくこういうことではないでしょうか。

「結果的に、野球界全体を身方にできた」

 

例えば、プロ野球の情報番組でも良かったわけです。実際最後の方はそうなっているし、大人に見せるなら企画的にはそちらの方が分かりやすいかもしれません。しかしそれよりも、未来の野球界を支える子どもたちの野球教室を支援する方に回った方が、どのチームの選手も、またプロ以外の野球選手もみんな「イエス」と言える番組になる。このポジション取りがこの企画の妙です。

実際に、この番組にはたくさんの名選手・名監督が出演し、「子どもたちに向けて」たくさんのメッセージを伝えています。そして、そんな場を提供してくれたミユキのことを野球関係者はもちろん「好き」になっていきます。

 

番組を持つことによって、
近づきたい相手に直接アプローチできるようになる

野球関係者と言えば、体格の良い男性の代表格。当時はプロスポーツと言えばプロ野球の時代ですから、プロ野球選手はミユキの服地の高級オーダースーツを着る代表格の男たちです。

もしかしたら、番組出演時にミユキのスーツやジャケットを着てもらえたかもしれません。普通ならプロ野球の一流選手に近づくことも難しいですし、ましてや自社製品を実際に着てもらうことはさらに難しい。でも番組を持つことで近づきたい相手に直接アプローチが可能になる・・・それが大きなメリットです。(実際に着たかは知りませんが)

 

御幸毛織は、この番組を媒介としてプロ野球界と非常に親しくなっていきます。
そして、この番組が縁で、1978年から今に至るまで、プロ野球日本シリーズのMVP選手にミユキの生地を使った高級オーダースーツを提供し続けています。

野球選手にとっては、ミユキのオーダースーツを着ること=超一流の証 なのです。

 

プロ野球日本シリーズのMVP選手と言えば日本の野球人たちの頂点、その全員がミユキのオーダースーツを着ていることのブランド力は、少なくともプロ野球選手とその予備軍にとって相当な効果があることでしょう。そして彼らこそ、ミユキの服地のよき見込客に違いありません。

 

近づきたい相手がしたいことを、メディア化でサポートする

これは、ミユキとプロ野球界とが長く築いてきた「信頼関係」の上に成立っている企画です。お金を極端にかければ不可能ではないかもしれませんが、基本的にそういうものではない気がします。プロ野球界は、「野球教室」という名番組を長年支えた御幸毛織をリスペクトしているといえるでしょう。

一方で御幸毛織から見れば、1本の番組の提供によって、野球界全体を身方にすることに成功しています

 

オウンドメディアを企画するにあたって、重要なヒントがここにあります。

あなたがビジネスで近づきたい人たちがいたら、
その人たちがしたいこと・すべきことを「番組」にして応援する


ここで、「番組」(または記事などでもいいですが)というメディアを介在させることが重要です。

例えば、御幸毛織がテレビ番組ではなく、直接各地で行われる「野球教室」をサポートしたらどうだったでしょうか? もちろん、子どもたちは喜ぶし、その教室に参加したコーチ役のプロ野球選手・関係者もリスペクトするに違いありません。

しかし、直接関係者ではない人に情報が広がらないと、関係者だけの感謝で終わってしまうことでしょう。これでは評価益を得るレバレッジはかかりません。

大企業のCSRでしていることなど、わたしから見るともったいないなと思うことはよくあります。

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