突然ですが、私はコーヒー好きです。
朝ガリガリとミルで豆を挽いてコーヒーを淹れています。挽きたてはやはり旨いのです。
なので、コーヒーは家で飲む方が美味しいなと思っていたのです。
しかし、考えたら最近は、外で飲むコーヒーと言えばスタバやタリーズ。またはシアトルカフェやサブウェイ・・・要するにコーヒーというよりも「電源」が目的なのですね。正直言って喫茶店という存在をなめてました。
隠れ過ぎの隠れ家カフェ
その店は、横浜中華街のど真ん中にあります。
最近、中華街のお店と仕事をすることになって、また横浜に定期的に行くようになりました。
「また」というのは、横浜は元々私が育った街だからです。いまも友人知人がいろんなところにいます。
本牧のバー仲間だった理華ちゃんが経営する「萬來行」という中華雑貨・土産物店の2Fで旦那さんがカフェをやってると聴いていたので、先日初めて行ってみました。理華ちゃんともずいぶん久々の再会です。
中華大通りという中華街のメインストリートのちょうど真ん中あたりにある「萬來行」は、お土産やアクセサリー、お茶等を求めるお客さんでいつも一杯の人気店。ところ狭しと商品が並ぶ店内に人がたくさんいるので、奥の様子はもちろん通りからは見えないのですが、この店の一番奥に2Fへ登る階段があって、それを登ると1Fの喧噪がウソのような静かな空間が広がっていました。
しかしそれにしても・・・隠れ過ぎです。笑
確かにね、「萬來行」の店先に小さな看板が吊るしてはあります。「2F、カフェ」みたいな。
でも、「萬來行」の色や形の洪水のような賑やかな商品たちの前にあっては、その看板はあまりに目立たない。Webサイトのバナー広告のように軽くスルーされていきます。
でもそれで良いみたいです。
「あんまり混むと大変なので…」・・・ということなら、私にはもちろん<隠れ家>は歓迎です。とは言えこの贅沢な空間がキープできる程度のお客さんが入ってくれれば、ですが。
「マーケティング」が生めない魅力が・・・
インテリアや小物なども、すべて店主の趣味で揃え、少しづつ店主本人が手作りした空間なのだとか。
確かに、時間がかかっていることが感じられる空間です。
普通お店の内装と言えば、物件を借りた時から家賃が発生していてなるべく早く稼働させたいわけですから、図面を元に設計士がざくざくっとデザインして、施工業者がばばばーっと工事をして仕上げていくわけですが、そういうやり方ではどうしても出ない雰囲気というのがあるものです。
海外に旅に出て、いわゆる観光地とは言えないような小さな町のはずれに、何だか妙にいい時間が流れている店があったりするでしょ。あの感じ。(まぁ海外旅行じゃなくて国内でもいいんだけど、最近はどんな田舎町に行っても想定内のデザインの店が多いのでね、坪単価いくら以内なんて条件が浮かびそうな…)
商売をするにはマーケティングはものすごく大事なんだけど、マーケティングに依ってしまうと生まれない魅力があることを分かっておかないとなぁと改めて思ったりします。
ノスタルジーとか、何か終わったものの振り返りみたいなことではなくて、世界が均質化している中で、それこそが今後ますます大事なものになっていくのでしょう。
でも、それをまた優秀なマーケッターやデザイナーがうまくノウハウを一般化してテンプレート化してという繰り返し・・・ あれ、何の話だっけ?
ともかく、こういう空間、そこに流れる時間は実に貴重だということなのです。
まぁその話はまた別の機会に・・・
旨い珈琲が思い出させてくれること
さて、いよいよ珈琲です。
萬來行カフェの珈琲はアツアツではありません。適度な温度。これが大事なところです。
ブラックで口に含むといい甘みを感じます。酸味はあまりなく、苦みも抑えられています。たぶんブラックコーヒーをあまり飲まない人にも飲みやすい味。
珈琲は嗜好品だから、酸味が強いのが好きな人も、苦みが強くないと嫌な人も、もちろんいるでしょうし万人受けというのがないのでしょうが、僕にはかなり美味しい珈琲です。
スタバやタリーズが日常化した身には、「あぁそう言えば喫茶店って、こういう時間を求めて行く所だったよなぁ」と思い出させてくれます。最近は余裕がなくぜんぜん<旅>に出ていないのですが、こんな手軽にその感覚を感じる場所があるなんて、とても貴重なことだなと思ったわけです。
もちろん、その感覚も私の独特なものなので、あまり一般的な話じゃないかもしれませんが、もしあなたが中華街に行く機会があれば、よかったら行ってみてください。
珈琲が好きで、旅が好きで、誰かと同じじゃないのが好きな人だったら、たぶん心地のいい時間を過ごせるのではないかと思います。
ちなみに、カウンター席には「電源」もあります。
中華街では、わたしがスタバに行く理由はこれで完全になくなりました。笑