トミタブログ

福祉は「サービス業」ですか?

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「虐待」が盛んです

特に弱者を保護し、幸せを目指そうという「施設」での虐待が毎日ニュースになっています。

「介護付き有料老人ホーム」

「障害者福祉施設」

「児童養護施設」

いたたまれない事件が続々と起きます。

 

職員を性善説で見ない福祉施設って・・・

施設運営会社の管理体制の問題、過酷な現場でのひと手不足や十分な報酬が回らない問題・・・
いろいろな問題点を、会社側、行政、マスコミ、そして世間、みんながそれぞれに挙げます。

老人ホームの運営会社の社長は
「性善説で職員を見ていた」「甘く見た」と言い、

行政の福祉担当TOPの副市長は
「本来一番安全なところに預けているはずで、ご遺族はいたたまれない」と言い、

マスコミは「防ぐ手立ては無かったのでしょうか?」と問いかけ、
みんなは頭を抱える・・・

 

確かにみんなそれぞれ余裕が無くて大変なのでしょう。
各人自分の責任を少しずつ回避している感じが現れています。

しかし、私はなんとも言えない違和感を感じます。

 

“職員を性善説で見ない福祉施設”なんて成立するのでしょうか?

“本来一番安全なところに預けている”と家族が思っていること自体に問題はないのでしょうか?

 

問題の根っこは、福祉の問題を経済で何とかしようと思っていることにあるように思います。

福祉は「サービス業」ですか?

 

福祉は「サービス業」か?

福祉施設の経営にアドバイスするコンサルタントは、「顧客はお金を出す家族であって、入所する“弱者”ではない」と定義するのでしょうか? 顧客ベネフィットは建前上は「大切な家族を笑顔に」で、実際のところは「顧客の大変さからの解放」なんでしょう。「ここなら安全、安心だ」と。

IMG_0479(写真は本文とまったく関係ありません。トミタがまちで見かけた面白い看板風景)

 

お金で買えないことをお金で解決できる「サービス」が生まれ、
しかしサービス提供側も実のところはお金が大事なので、
そのしわ寄せは結局弱いところに行きます

一方で“万が一”への対策を
罰則や監視強化や保険の積み増しで対応すると、
行政マンの数と保険代ばかりがますます膨らんでいく・・・・

もう何だか分からない悪循環です。

 

新潟で生まれた“地域の茶の間”
「ここにはサービスの利用者は一人もいない」

新潟市で河田珪子さんという方が運営した常設型“地域の茶の間”「うちの実家」をご存知でしょうか?

1997年から河田さんが空き家になっていたごく普通の一軒家を貸してもらって始めた月1回の地域交流の場です。お年寄りや障害者、子育て中の母親たちが気楽に立ち寄り、好きな時間を過ごせる「居場所」で、特別なプログラムは何もなし。それでもいつの間にか将棋をしたり絵を描いたり字を書いたり…それぞれ好きなことをして一緒に時間をすごすのです。

「家の実家」は、参加費300円。食事代300円。
ここでは誰かがサービスする人、誰かがお客さんという考えをまったくしていません。一応「当番」という有償ボランティアが1名いて食事を作ったり気配りしたりするようになってますが、河田さんが最も気を使ったのは当番のサービスをみんなが受けにきているのではないというシステム。

「ここにはサービスの利用者は一人もいない。いるのは場の利用者だけ」

 

この素晴らしい場作りに新潟県や新潟市も注目し、集会所や空き家を利用した住民主体の支え合いとして広がりをみせ、今では新潟県内30近い市町村1500カ所以上で月1回以上「地域の茶の間」が定期開催されているんだそうです。もちろん全国各地からの視察もたくさん来ていて、他県にも動きは飛び火し、またこれに影響を受けたわけではなくても同様の動きはいろいろな地域で見られます。

 

ベネフィット主義に偏りすぎた「サービス業」を正常化するには

そもそも、福祉はもちろん、教育、報道、行政、警察、医療などを「サービス業」だと捉えるのには無理があるのは明らかでしょう。

少子高齢化の時代の中、これからはあの分野がビジネスチャンス!などと、上記事業の経営者がみんな「経済合理性」で行動したらどうなるでしょうか?

 

働く人だってそうです。もちろん生活の糧を得るための「仕事」であり、給与をもらうのは当然だし、みんなそれぞれいい暮らしを望み、給与は多い方がいいと思うのも自然でしょう。

でも、福祉、教育、報道、行政、警察、医療などの従事者がみんな「経済合理性」で行動する人ばかりならどうなるでしょうか?

 

実際には、サービス業だけではなく製造業も一次産業もみんなそうだと思いますが、特に「サービス業」に関しては顧客ベネフィットに徹底的に応える経営が目に見えやすい形で無理の歪みを露呈します。

サービス業は「人が提供する仕事」だからです。

 

農業なら肥料や温度管理などで無理を可能にし、工業製品なら機械設備や薬品の使い方で無理を可能にしているものが、サービス業は人に無理をさせるので、歪みが見えやすいのです。

(本当であれば、サービス業だけの問題ではありません。一次産業や二次産業がかけている無理も例えば地球環境が悲鳴を上げるように非常に解決しづらい形で露呈していくことでしょう)

 

私たちは、本来自分たちが手を動かしたり時間を使ったりしてして来たことを、「サービス」という形でお金で買いすぎです。そしてもっともっとと高度化と低価格化を同時に求め、または次々提供してくる企業を求めすぎなのではないでしょうか。

まずは「サービス」をお金で買うだけでなく相手をリスペクトして感謝の関係を結ぶこと、一方で逆にできることを自分でする喜びや誰かのためにしてあげる喜びを思い出していくことが必要なのではないでしょうか。

 

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