トミタブログ

未来予想図2021秋 新しい資本主義考

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メディアプロデューサー、クリエイティブディレクター、トミタプロデュース株式会社の富田剛史です。

今週末の衆院選でも「新しい資本主義」や「新しい時代」について、各候補もメディアも盛んに論点を整理しています。選挙とは関係ありませんが、私の未来予想図:新しい資本主義について考えてみました。

世界が同時に「時代の潮目」に向き合っている…こんなこと滅多にありません

東京大学の宇野重規先生が3つの論点を挙げていました。

  1. 資本主義の再定義と再構築
  2. ウィズコロナ、アフターコロナの社会のあり方
  3. 脱炭素社会への対応

まさにこの3つの課題=大きな時代の潮目に、世界同時に向き合っているのが現代。こんなこと歴史上にあったでしょうか? そのくらい我々は面白い時に生きてるんですね。

私はこの3つを個々にではなく、いっぺんに考えることで近い未来の姿が見えてくると思います。

資本主義の再定義にあたって、まずはなぜこうなってるのか原因を知る参考書

最近読んで参考になった本や記事をシェアします。

まずは、村上誠典さんの著書「サスティナブル資本主義 -5%の「考える消費」が社会を変える-」

著者は東京大学・宇宙科学研究所(現JAXA)を経てゴールドマン・サックス証券で多数のM&A、資金調達、IRを担当し、現在はスタートアップのベンチャー支援、キャピタルマネージメントの会社を経営されています。

前半の、「資本主義が変わっていった理由」、「貧富格差が広がる理由」などはわかりやすい。しかし、後半の解決策の方は、それが進むモチベーションや仕組みが弱いなぁというのが僕の感想です。

なぜこうなったか…はよく分かるが、どうしたらいいか…は「うぅ。」となる本。

たぶん著者の周囲はみんな優秀で、ルールに基づいて勝ち抜くことが大好きな人ばかりなのだろうなぁと想像されます。でも村上さん、世の多くを占めるのは、「競争も好きじゃないし、課題解決も興味ない人」なんですよ。僕はそう思います。

もうひとつはWEB記事。「なぜこうなってるか」…こちらのほうが本質をわかりやすく伝えてくれます。

「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い | 小幡績の視点

toyokeizai.net

著者は慶応大学の小幡績準教授。
現在の株式市場と実体経済の乖離について、それは全く異なる生物の活動で2つは別物…と論破しています。

  • 株高は主にITや環境関連など新興企業への期待で、世の実体経済を支える旧来企業とは関係ないこと
  • そもそも株式市場は上場企業の話で、多くの中小零細企業には関係ない話
  • 株高企業の利益は、資本家とトップ経営者に分配され、労働者には分配率が低いこと

以上が、コロナで不景気なのに株価がどんどん上がるのは、変でもなんでもない理由だと。

そして小幡先生は、実体経済しか見えない人と資産経済を生きる人との違いを、地球人と火星人くらい違うと例えています。

ただ、こちらも解決策は特に示されていません。そうなのだ…というだけ。

では、資本主義をどう再定義すればいいの?

そもそもなぜ「資本」が必要で、それが「主義」にまでなったか…というと、渋沢栄一の時代には巨大な設備とたくさんの労働者が必要だったからです。設備と労働者をまずお金で買って、資本家と経営者は巨大なリスクを背負って(労働者に先に金を払って)新しい価値を生み出し、それによって自らの益を得る構造でした。

労働者も働いて自ら資本を貯められ、また良いビジョンを語れば誰かが資本を投下して、経営者となり資本家となれる。権力や武力ではなく、資本力によって統制される自由な社会を作るという考え方、それが「資本主義」。

簡単にいうとそんな感じ。

ところが、技術革新でだんだん巨大な設備とたくさんの労働者はいらなくなった。これが大きな時代の変化です。

昔だったら何でもかんでも、ずらっと機械が並ぶ工場とたくさんの労働者が必要だったのが、今は多くの事業でパソコンと便利な仕組みがあればなんとかなる…という事実は大きな変化でしょう。

行き場を失っている「資本」。しかし必ず、次の行き場を探さねばなりません。

実体経済とキタイ経済。より膨らむところに集まるのが「資本」

ここで「資本」の本質は何か考えてみましょう。

資本とは「付加価値を生むための元手」です。自分の「資本」を使い何かをすることで新しい価値が生まれて、元の資本よりも価値が膨らむから意味があります。

例えば、持っているお米を全部食べたら無くなるだけですが、一部を食べて次の収穫まで生きながら、種籾を育ててより多くの米を得る・・・という行動を取るなら、持っていたお米は「資本」になるわけです。

そして、自分で育てるだけじゃなく、種籾を誰かに預けて育ててもらうのが投資。より多くの収穫高が<期待>できる人を探すのが資本家のモチベーションです。

この時点では、期待が膨らんでもリターンはせいぜい米の収穫で、これが「実体経済」。

ところが、投資が「株」になり、その株自体が市場で売り買いされるようになるとシステムは変化します。最初は「秋に種籾が元より増える」という収穫への期待の直接投資ですが、次の人は「この株価がもっと上がる」と別の期待を上乗せして株に投資するからです。秋の収穫自体は増えるわけではないのに、株券が取引されるたびに「期待」が期待を上乗せして、まるでヒートアップした「気体」のように膨らんでいきます。

トミタ名付けて「キタイ経済」

キタイで膨らんだ価値が「絵に描いた餅」なら、「いくら膨らんでもそんなモノは食べられめぇ〜…」と笑い話なのですが、幸か不幸か膨らんだ価値は実体経済で生み出した価値と同じお金に変えることができます。

そうなると、実体経済だけで生きる人は相対的に貧しくなっていきます。だから、考え方と行動を変えないと、絶対にお金持ちになれませんよ〜というのが、ここ30年ほどのベストセラーや、様々なお金の情報を扱う人が言っていることです。誠に正しい。多少は考えないとなぁ…。

でも、みんながそんな考え方と行動をするようになったら、いったいどうなるのでしょうか? それで世の中丸く収まりますか? 僕にはそうは思えません。

「ノーコード革命」による変化も見逃せない

さて、話は変わりますが、最近の私のマイブームは「ノーコード革命」。

これがまた大きく時代を変えそうです。特に、ウィズコロナ/アフターコロナを考えるのに重要な技術革新を、大企業ではなく、一般の人がみんなで競って広げていく新トレンドです。

昔ならプログラマーがコードを書かないとできないことが、「ノーコード」でどんどん開発できるようになってきているということ。そして、若者たちにその利用が凄い勢いで広がっています。

例えて言うと、彫像を作るのに木から彫るのとLEGOで作るくらいの違いです。

注文があったらGoogleワークシートに書き込む…みたいなタスク系の他にも、クリエイティブ系やアプリ開発なども、どんどんノーコードの世界が広がっています。
若者には、まるでゲーム感覚なのではないかと思います。これとこれを組み合わせて、うまくセッティングすれば思った結果が出てくる…と。

ノーコード開発をする人は、仕事ではあるけど半分はゲーム感覚で楽しんでいる。それが時給を得るために単純労働をする労働者との最大の違い。昔ながらの実体経済しかイメージができないおじさんおばさんからすると、彼らもまた、思考も行動様式も全く違う存在です。

小幡先生の例えを真似れば、地球人と金星人ほど違う。
つまり今、地球人と火星人と金星人が新しい社会を作ろうとしているわけです。

若者のビジョンと技術の融合に資本家がキタイを膨らまし、SDGs実現に突き進む先には・・・

彼らのはじめのモチベーションは、お金儲けや立身出世ではありません。ゲームのように問題解決をするのが楽しいのです。

なかでも、社会の問題解決をするのは楽しいし、地域や誰かの役に立つのが嬉しい。DXを駆使すれば地球環境にインパクト少ない開発にもつながる。脱炭素社会の実現など大きなビジョンを描ける人は、それを事業化してスケールしようと考えるでしょう。

一方で、投資家・富裕層は彼らの登場を歓迎します。大きな「期待」が持てれば、その成長を後押しします。ここにやっと「資本の行き先」ができるわけです。

そしてまた資本は気体のように膨らんでいきます。それも一種のゲームのようです。

つまり、これが「新しい資本主義時代」というゲームの構造。シリコンバレーとウォール街がキャッチボールしながら欧米が一気にこのゲームに邁進したここ30年、日本はそのルールがほとんど分からないまま、過去の栄光と想い出に浸りながら気がつけば相対貧乏になっていたんですね。


前に私は、「SDGs」は「新時代」と、「DX」は「ゲーム化」と一括変換すれば意味が分かりやすい・・・と書きました。(トミタのnote)

  • 若者は新時代の技術を使い小さなリスクでDX起業し、IT/AI/ロボット等で社会問題を変革する
  • 企業はそれで、もっと合理的に利益を最大化し、多くの人々を単純労働から開放していく
  • 未来への期待に投資家が資本を投下し株式市場が活況となり、資産経済は膨らんでいく
  • そして、社会問題解決と地球環境の維持を図りながら、同時に経済が発展していく

実に素晴らしい循環!これぞSDGsの描く未来!アフターコロナの脱炭素社会で持続可能な経済発展だ〜!?ですが、ちょっと違和感を感じませんか?

社会とは、多くの人々が幸せに生きる時間と空間なはずです。ベンチャー企業が投資を得てバリバリ開発するDXで、企業の単純労働から開放された多くの人々が何をするのか? それが問題です。

元気な魚がいないと釣りは楽しめないのだ

「社会」とはより多くの人が生きる場です。

例えば、どれだけ腕をあげたり道具が良くなっても、釣り人だけでは釣りは楽しめません。魚がたくさん元気に泳いでいることを前提として、釣り人は楽しく釣りを続けられるのです。

人々をお魚に例えて誠に失礼ですが・・・私も含めてお魚なのでお許しください。

画期的な社会問題解決アプリも、消費者の心わし掴みにするヒット商品やサービスも、元気で街を愛する一般消費者がたくさん居ないことには意味がありませんよね?

つまり、「社会」の多くの人々が生き生きしていないと、ゲームを続ける甲斐がないと言うことです。

人は経済合理性で行動するとばかり思っている人には見えないかもしれませんが、案外そうじゃない人は多いものなんです。もちろん、「お金」という生きる糧が多く得られることに異論を唱える人はまずいません。それはそうなのですが、ちゃんと幸せに生きていけるだけ回ってくれば、お金よりも別のことに価値意識が向かう人はたくさんいます。

そういう人が、好きな街で小さな店をやったり、エッセンシャルワーカーといわれる仕事に誇りを持ったり、子どもたちに何かを教えていたりするのでしょう。歌をうたい、絵を描き、踊りを踊ったり、より速く、より高く、より強くなって競い合いたい人もいます。

その人たちの多くは、外部からの大きな資金調達など考えない、いわば現代の資本主義ゲームに参加していない人たちです。政府の政策顧問デービッド・アトキンソン氏が「淘汰されるべき」と考える存在ですが、「とんでもない!」と私は言いたい。その人たちがたくさんいるから、世の中は楽しいんじゃないか〜ってこと、分かってないねぇ、デービッド。

小商い好きの独立起業家が次々現れ、小さいまま楽しく持続できるようにすることが、「地域社会」と「新しい資本主義」を持続可能にする

私がゲーム好きに提言したいのは、大勢のお魚が元気に生きられるサポートをしたほうが良いですよということ。具体的には「小さな実体経済ビジネスを一生懸命やりたい」という個人起業家を支援してほしいのです。

決して、彼らに合理的な考え方を身に付けさせるのではありません。そのままの存在で事業を回していけるようにサポートをすることが重要です。

株式公開も、市場からの資金調達もしない以上、日経平均や円相場を基準に考える経済への影響はほとんどないかもしれませんが、政府にしても資産家の皆さんにとっても、そんな人たちが「雇用」ではなく自分の小さなビジネスを立ち上げて何とか回しイキイキと生きている社会を作ることが、自分たちのためになると思いませんか。

地域自治体の方ならなおさらです。こういう実体経済を輝かせる担い手がたくさんいるからこそ、街は面白くなるんですから。ローカルでインディ資本なビジネスこそが、地域を持続可能にするのです。

個々は小さな規模でも、こうしたマイクロビジネスがたくさん成りたてば、実体経済の規模が徐々に大きくなってくるはずです。その中から、何%かは「資本主義ゲーム」のルールに則った事業を展開するプレイヤーも出てくるでしょう。

ベーシックインカム・・・というサポートの方法もありますが、ベーシックインカム制度は魚の例えで言うと「養殖」のようなもので、さほど儲からないけれど自分の好きや得意を生かして小さな起業をする人をサポートするのが「天然物」の消費者を育てる方法ではないでしょうか。

数多くの「実体経済の担い手」が少しの儲けと豊かな気持ちを持てれば、つまり元気な魚になれば、別の次元でビジネスをしている大企業やグローバル企業、さらに新たな社会に起きる問題を解決するアプリやシステムの作り手にとっても、ゲームしがいのある嬉しい状況になるでしょう。当然彼らを支える資本市場も元気になる。



とはいえ、自分のビジネスを立ち上げることなどできない人たちも、もちろんたくさんいるでしょう。
そこに対しては「ベーシックインカム」を導入したらいいと思います。生活保護や福祉的な意味合いではありません。誰にとっても重要な消費者と言う対象を生かすための戦略的な投資です。

しかし、ベーシックインカムで生きる人が多いよりも独立開業して自立を目指す人を増やす方が、社会コストも少なくて済むし、何より全体幸福度が上がるので、そちらを目指す人が増えるように教育や機会の提供をしていくことがみんなにとっての最適解になってくるのではないでしょうか。

長々とした論考になりましたが、以上が私が想う幸せな未来の設計図です。
国の政治/地方自治体/経済界と投資家の皆さんなどへの提言。お読みいただき、誠にありがとうございました。

ではどのように、小さな起業家支援をしたら良いか・・・それはまた改めて書くことにします。

とみたつよし|メディアプロデューサー/クリエイティブディレクター